研究概要 |
本年度はシダの展開葉のサイズと形の比較研究のうち, 主に(1)垂直分布と発達段階, (2)北海道の温度環境の異なる水平分布地域間の比較, (3)ダイコンソウ(林床種子植物)を用いた群葉構造の季節動態に関する結果を得た. 形のパラメーターとしては, NV(中軸分枝数)・DI(円からの隔り)・たてよこ比, サイズとしては, LL(葉長)・BL(葉身長)・S(葉面積)・W(葉幅)・ML(周長)を測定した. 手稲山での標高, 600m・480m・250m・130mでは, 胞子葉のNVは各々, 68.5・73.1・80.1・81.1である. 600mと130mでは有意な差がある. また北海道全域を積算温度(WI)と温較差(DT)にジュウモンジシダの出現頻度を加味してA〜Eに五区分した. 高いWIはBとD(南西部と中央南部)でみられる. 低いWIはCとE(北部と東部)でみられる. 高い温較差はA(中央部)でみられる. 低い温較差はB・D・Eにみられる. 胞子葉の平均NVは, C(70.80)→E(7.88)→D(75.57)→B(80.38)→A(81.48)と次第に増加する. C・Eはいずれも低いWIをもつことから, NVはWIの低い地域で低下する傾向がある. さらにBLに応じたNV増加をより詳しく検討た結果, 手稲山ではBL>33cmの葉では, 150-300mのものが500-650mのものより15-NVも高い有意な差を示す. また北部(C)ではBL>15cmのものがA・B・Dのものより10-NVも低い有意な差を示した. すなわち冷涼な地域では同一サイズでも羽片の切り出しに明らかな低下が見られた. ダイコンソウの根出葉におけるサイズと形の季節動態を調べた結果, 葉数は春と晩秋に多い. 個葉の平均葉面積は夏に多い. 葉長あたりのDI増加は5月上旬に高く(0.24, DI/cm), 他の時期は0.07前後である. 個体あたりの総根出葉面積は夏に高い. 季節を通じて個葉の相対的なLL・S・DIの変動を見ると, 春にはDIがやや早く増加し, LLとSがつづき最大値に達する. 一方8-9月にはLLとSは再び最大値に近づくが, DIは半分にとどまる. すなわち, 秋葉は同じサイズでも形が単純なことを示す.
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