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オルガネラゲノムの遺伝様式は細胞核ゲノムの場合と異なる。
葉緑体ゲノムの遺伝は緑藻単細胞生物のクラミドモナスでよく研究されている。この生物では雌雄配偶子の接合後、雄性配偶子の葉緑体DNAが選択的に消却される結果として、雌性配偶子の葉緑体ゲノムだけが接合子に伝わる母性遺伝の機構が存在する。しかし現在のところ(1)雄性配偶子の葉緑体DNAを消す酵素と(2)この酵素が雌性配偶子の葉緑体DNAを識別しこれを消却しないメカニズムについては全く解明されていない。
私はこれまでの研究で、条件次第では配偶子にヌクレアーゼCをCa^<2+>存在下で外から加えることで、雌配配偶子の葉緑体DNAを残し雄性配偶子の葉緑体DNAだけを消すことができることを明らかにした。そこで本年度では雌雄配偶子間の分子形態学的差を明らかにする研究計画をたて、次の3点について研究実績を得た。
1.接合子の細胞表面に対するモノクローン抗体を調整し、雌雄配偶子間と接合子との間で差があるか検討した。
2.ヌクレアーゼCによる破壊と破壊からの防御を考える場合、オルガネラDNAを取り巻く状況を明らかにする必要がある。オルガネラDNAを無傷のまま取り出しヌクレアーゼCによる破壊と防御をより分子レベルで解析するためのモデル系をつくった。
3.雌雄配偶子のオルガネラDNAに結合しているたん白質の量的また質的差が選択的破壊と防御に関与している可能性がある。そのためにアイソトープを使わずにかつ鋭敏なDNA結合たん白質を検出する方法を考えその原理を理論的に明らかにした。
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