1.孔牛胸腺ヒストンを蛍光ラベルしてイトマキヒトデ(Asterina pectinifera)卵に注射してから、卵成熟を誘起したところ、減数分裂の染色体が可視化できた、次に、受精したところ卵割時にも染色体が観察された。ヒストンH1からH4までの各クラスヒストンを蛍光ラベルして可視化を試みたところ、H1とH2Bによって可視化できた。これらを利用して、DNA合成阻害剤AphidicolinでDNA複製を阻害した卵の分裂における染色体運動の様子を観察できた。染色体は赤道面に並んで中期までは正常に進行するが、赤道面から移動せずに卵割が行われ、後期以降に異常がみられた。このことは、固定後チューブリンとDNAの二重染色実験によってもはっきりとした。中期までに分裂装置が正常にできるが、後期以降とみられる細胞にも染色体が動かないままの紡錘体が残り星状体のみ成長した。また、第二卵割以降には、染色体、紡錘体がなくて星状体のみの分裂装置ができて卵割が進行した。 2.分裂装置には4種の役割の異なる微小菅が存在すると考えられるが、これらを形成しているチューブリンがどのようなものか不明の点が多い。本実験では、この点に付いてチューブリンに対する単クローン抗体を用いて調べた。バフンウニ(Hemicentrotus pulcherrimus)、タコノマクラ(Clypeaster Japoricus)卵の第一卵割各期に微小菅を保存するような組成の液でライシスし、固定後チューブリンの単クローン抗体を用いて間接蛍光抗体法により分裂装置の微小菅を観察した。単クローン抗体は分裂装置全体の微小菅を染色するもの、全体を全く染色しないもの、紡錘体のみを染色するもの、星状体のみを染色するものの4つのグループに分かれた。今後、これらの単クローン抗体が染色する微小菅と各微小菅の4グループとの関係に付いて詳しく調べたい。
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