アフリカツメガエルの受精卵を低温処理することにより作製した3倍体では殆どの個体が卵巣様の生殖腺をもっている。しかし3倍体では肥大卵母細胞が成育しない。尾芽胚の時期に生殖細胞を含む部域を切り出し、生殖堤を含む個体との間で交換して2倍体と3倍体とのキメラ個体を作製することにより卵巣内の生殖細胞とその他の間葉性組織との卵母細胞肥大に関する機能的協調機構の解明を試みた。 1.昭和62年度は始原生殖細胞検出のための染色法の確立および頭半部と尾半部との間でのキメラ作製を試みた。尾芽胚後期ではすでに運動性を獲得しており、麻酔や接着のための床作り、減菌消毒の条件設定が行われた。 2.昭和63年度のアウランチャ・アミドブラック二重染色により始原生殖細胞の同定法を確立し、生殖細胞を含む部域をブロックとして切り出すことによる交換移植法によりキメラ作製効率が上昇した。 3.平成元年度は改良した方法により2倍体相互間での入れ換え手術、2倍体と3倍体との間でのキメラ個体の作製に成功し、変態後5ヶ月までの成体を得ることが出来た。これらの個体の組織学的検索の結果、入れ換え手術は卵母細胞の肥大成長には影響を及ぼさないことが確認出来た。3倍体に2倍体の始原生殖細胞を移植した場合は卵母細胞の肥大は可能であった。しかし2倍体に3倍体の始原生殖細胞を移植した場合には無手術の3倍体個体の卵巣同様に肥大しない卵母細胞が見出された。 以上の結果から3倍体における卵母細胞の肥大障胆の原因は生殖細胞自体にあると考えられる。 核の形態により識別可能な他種Xenopus borealisとの間でのキメラ作製は受精率が悪く成功しなかった。今後に残された課題である。
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