研究概要 |
1 ムラサキイガイ(二枚貝)の足神経節から下記の3種の新型神経ペプチド(CARP.ALA^2-MIP, Ser^2-MIP)を分離して, その構造決定と合成をサントリーの久保田一郎氏に行ってもらい, 合成ペプチドを用いて, 種々の動物の神経-筋系における作用について調べた. 2 CARP(Ala-Met-Pro-Met-Len-Arg-Leo-NH_2). これは, イガイ足系牽引筋のCatchの弛緩をもたらすペプチドなのでCatch-relaxling nentide(CARP)と名づけた. 当初, これは筋組織中の弛緩神経要素に作用し, セロトニンを放出させることを通じて弛緩をもたらすと考えていたが, その後の研究で, 筋細胞に直接働いて弛緩をもたらすことを示唆する結果を得た. 又, Catchの弛緩に生理的に関与していることを示唆する結果も得た. さらに, 他の軟体動物の種々の運動筋や心臓で, 収縮抑制あるいは増強活性を示すのみならず, 環形, 節足, 脊椎動物のある種の筋でも収縮修飾性の活性を示すことがわかった. したがって, 本ペプチドあるいはその仲間は, 軟体動物のみならず, 他の動物門にも広く分布している可能性があり, 今後この点について詳しく調べるつもりでいる. 3 Ala^2-MIPとSer^2-MIP(Gly-Ala-Pro-Met-Phe-Val-NH_2とGly-Ser-Pro-Met-Phe-Val-NH_2). これらは同族体であり, 足糸牽引筋の収縮のみならず, 他の種々の軟体動物の運動筋や心臓の収縮を抑制するので, Mytilus inhibitory peptides(MIPSs)と名づけた. これも, その仲間が軟体動物に広く分布している可能性が大である. マイマイでは, 筋のみならずある種の同定ニューロンの活性も抑制するので, 特にこの動物における存在や作用は詳しく調べたい. 他の動物門における作用はまだ調べていないが, この点についても, CARPと共に調べて行きたい.
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