研究概要 |
1.ムラサキイガイの足神経節から3種の生理活性ペプチド(CARP,Ser^2ーMIP、Ala^2ーMIP)を単離し、その構造決定と合成を行った(構造決定、合成はサントリ医薬センターの久保田一郎氏に行っていただいた)。 2.ムラサキイガイの足系前牽引筋中に含まれる生理活性ペプチドを探索し、本筋に、前記の3種のペプチドに加えて、数種の新種ペプチドが存在することを強く示唆する結果を得た。 3.コナガニシ神経節中に含まれる生理活性ペプチドを探索し、本神経節中に、CARP様ペプチドとFMRFamide様ペプチドに加えて、数種の新種ペプチドが存在することを強く示唆する結果を得た。 4.合成したCARP とMIPsを用いて、その活性を種々の軟体動物の筋について調べた結果、これらペプチドは、軟体動物の筋に広く抑制活性を示すが、CARPとMIPsでは作用機序が異なることを示唆する結果を得た。 5.同様にして、種々の非軟体動物筋における前記3種のペプチドの活性を調べた結果、CARPはユムシ、環形動物、昆虫、哺乳類の筋において活性を示すことがわかった。しかし、MIPsは、調べたかぎりでは、軟体動物以外の筋では活性を示さなかった。 6.CARP、MIPs、FMRFのmideの抗体を利用して、組織学的および生化学的方法で、軟体動物や他動物におけるこれらペプチドの同族体の存在や局在性を調べている。 7.合成したペプチドやその抗体は、国内外の多くの研究者に利用されている。彼らの得た結果と我々の得た結果を考え合せると、CARP,MIPsあるいはその同族体は、軟体動物に広く分布しており、末梢や中枢において重要な情報伝達物質として働いていると思われる。今後、他動物、特に脊椎動物における同族体の探索が望まれる。
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