研究概要 |
軟体動物からミオグロビンを得るため, 今回マダカアワビ, クロアワビ, トコブシなどのアワビ類や二, 三の巻貝について, その含量, 材料入手手段等を検討した. その結果アワビ類は口球の筋肉にミオグロビンをかなり含有していることが判明した. そこでマダカアワビ(2.0kg)から口球とその周縁部を単離(20g)し, 水抽出, 硫安分画, ゲル濾過法を用いて10mgのミオグロビンを得ることができた. このミオグロビンはゲル濾過法, 及びDTT還元下でのSDS電気泳動法で共に分子量35000程の単一バンドを示した. このことはマダカアワビ口球に含まれるミオグロビンがふたつのドメインをもつ分子量35000の単量体であることを示している. ヘモグロビンは単量体, 二量体, 四量体, 巨大分子の存在が知られ, そのサブユニットも分子量17000のほか, 無脊椎動物においては分子量35000(2ドメイン)やそれ以上のものも最近は知られている. しかし, ミオグロビンについては, 我々の知るかぎりにおいては, そのサブユニットの分子量は17000程度であり, 今回ミオグロビンとしてははじめてふたつのドメインをもつ分子量35000の分子が発見されたことになる. このことからすくなくとも無脊椎動物においてはミオグロビン分子はヘモグロビン分子と同じように多様な分子形態を持っていることが判明した. このことはミオグロビンとヘモグロビンは同じように分子進化してきているのか, またはこの両者は分子進化上では区別されないものであり, 両者は表現型の違いを意味しているのかもしれない.
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