軟体動物のもつミオグロビンのアミノ酸配列を知るためにアワビ類口球からミオグロビンを単離することを試みた。その結果アワビ類は今までに知られていない特異的なミオグロビンを含有していることが判明た。ミオグロビンは通常分子量17000で酸素結合部位であるヘムを1個含有しているが、今回発見されたアワビ類のミオグロビンは分子量35000程でふたつのドメイン構造をもつと推定された。そこでトコブシ(Suilculus diversicolor aguatilis)の口球からミオグロビンを単離精製した。このミオグロビンのヘム含量は分子当り1個と算出され、これよりふたつのドメインのうちひとつは酸素結合部位でアルヘムを失っていると思われる。このようなふたつのドメインを持つミオグロビンは今までに知られていない初知見である。このような例は同属のタンパク質であるヘモグロビンで同じ軟体動物のエガイから知られており、また一部の巨大ヘモグロビンの構成鎖にも存在するようであり、進化の過程において特定生物種群において遺伝子重複がおこってふたつのドメインをもつタンパク質ができたと考えられるので大変興味あることである。そこでそのアミノ酸配列を知るためにトリプシン消化で得られたペブチドのアミノ酸配列を決定した。今度トコブシミオグロビンのアミノ酸配列を決定した。今後トコブシミオグロビンのアミノ酸配列を更にくわしく調べる予定である。 一方、同じ軟体動物トゲアメフラシ口球からミオグロビンを得ることにも成功したので、このミオグビンのあみ酸配列を決定しつつある。今のところ近縁のタツナミガイミオグロビンと比較すると146残基中23ケ所のアミノ酸に置換が認められた。このことからトゲアメフラシミオグロビンは通常型のミオグロビンであり、その置換数もおおむね妥当な値を示していると思われる。
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