1.神経成長因子(NGF)とNGF受容体との相互作用-GTP結合蛋白質(G蛋白質)の関与- NGF作用にG蛋白質が関与するかどうかを、GTPアナログを細胞内に導入したPC12細胞への^<125>I-NGF結合量を調べることにより検討した。GTPアナログ細胞内導入には、パレス電圧法を用いた。パレス電圧法により細胞内に導入される^<35>S-GTP_γS量は、パルスの回数・強さ及び細胞懸濁液中のGTP_γS濃度に依存して増加した。異なるGTP_γS濃度1-100μM)下でパルス電圧をかけた後、細胞表面への^<125>I-NGF(100pM)の結合量を測定した。^<125>I-NGFの結合量は、処理したGTP_γS濃度に依存して増加し30μM GTP_γSでピークをもった。このGTP_γSの効果を他のヌクレオチドと比較すると、GTP(800μM)が次いで大きく、GMPは多少効果をもつが、GDP、ATPは効果を持たなかった。 2GTPアナログによるNGF結合のモジュレーションは、NGFの活性を左右する。 PC12細胞は、NGFの作用により突起を形成し交感神経様細胞に分化する。1において、細胞へのNGF結合がGTPによりモジュレーションされることが明らかとなった。そこで、GTPアナログの細胞内導入が、細胞の突起形成に影響するか調べた。GTP_γS導入(細胞外GTP_γS濃度1-100μM)による細胞の突起形成は見られないが、GTP_γS導入後短時間のNGF処理を行った場合に限り、GTP_γSを導入していない細胞に比べ細胞の突起形成率が高まった。最も効果的なGTP_γS濃度が数10μMである点、他のヌクレオチドの中では、GTP(800μM)が同程度の効果をもつ点が、1つの結果と一致している。 1.2の結果は、NGFとNGF受容体との結合の過程にGTPを必要とする系が存在することを示唆している。
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