アフリカツメガエルとイモリ精子のべん毛の長さの違いが何によって決まるのかを調べるために、精細胞を同調培養し、べん毛成長の速度論、tubulin pool量、tubulin合成の経時的変化などを解析した。べん毛成長の速度、期間に於てイモリの方がアフリカツメガエルより2-3倍大きかった。精細胞のtubulin pool量の変化を経時的に調べたが、イモリもアフリカツメガエルも変化はみられなかった。tubulin合成の経時的変化を調べたところ、アフリカツメガエルではべん毛の伸長がみられる4日目まではtubulinの合成がみられるが、べん毛の伸長が止まる6日目になるとtubulinのスポットは、検出できなった。つまり、べん毛が伸長する間はtubulinの合成が起こるが、伸長が止まる頃にはtubulinの合成も停止する。イモリ精細胞についてはtubulinの合成は12日目まで培養日数が進につれて弱くなったが、アフリカツメガエルの場合のように検出できなくなることはなかった。アフリカツメガエル精細胞においてミトコンドリアが核膜の周囲に付着、集合する機構を調べるため、まず蛍光色素のrhodamine123でミトコンドリアを生体染色し、精子形成に伴うミトコンドリアの細胞内分布の変化を蛍光顕微鏡観察により調べた。次に、培養精細胞に14種類の阻害剤を投与した結果、いずれもミトコンドリアの核膜への付着、集合を阻害しなかったことより精細胞に含まれる細胞骨格系や第二分裂中期以降のタンパク質合成、RNA合成、糖鎖合成、細胞内cAMP、ミトコンドリア内のタンパク質合成、ATP合成、細胞内Ca^<2+>とミトコンドリアの核膜への集中とは関係がないと考えられる。次に、精細胞の核を単離すると、ミトコンドリアは核に付着したままであった。肝臓のミトコンドリアは精細胞の核に付着したが、肝臓や精母細胞の核には付着しなかった。これらの結果から、ミトコンドリアと核の結合は、ミトコンドリアではなく核の変化によることが示唆された。
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