研究概要 |
1.光周性LH分泌に対する温度の効果:春先と秋では, むしろ春先の方が日が短いにもかかわらず生殖線の発達がおこり, 秋には急速な生殖線の退縮がおこる. この現象は光不応と呼ばれ, 長い間, 長日にさらすと光周期の長さにかかわらず長日の効果がなくなるためとされている. しかし光不応の本体はよくわかっていない. そこで光周期以外に, 明らかに年周期的に変動する外界の要因である気温をとりあげ, 温度の光周性LH分泌に対する影響を調べた. 7°C, 19°C, 25°Cのいずれの場合も, 8L16Dから16L8Dにすると光周性LH分泌誘導が見られた. しかしながら, 同じ温度条件下で16L8Dから8L16Dに戻すと, 19°C, 25°Cでは短日効果が顕著でない固体が多かったのに, 7°C, ではすべてLH分泌は低下し, 未成熟な状態になった. 2.自然の光条件でのウズラ血中LHの変動:個別ケージに入れたウズラを屋上に置き一年間, 毎週採血して血中LH変動を調べるとともに, 外気温を記録し, 薄明から薄暮までの時間を記録した. 血中LHは2月初めごろより突発的に上がり始め, 3月には高値となった. これと平行して3月中頃には精巣の活性を表す総排泄腔降起の大きさが, 十分に大きくなった. この状態は8〜9月まで維持され, 9〜10月に急速にLHの低下が見られた. この頃は日の長さは2月中頃と同じであり, 一日の最低温が10°Cを割り始める頃であった. 3.以上の結果より, LH上昇開始のときは温度は関係ないが, 日が短くなる時期には温度, 特に低温がともに働いて, LH分泌を抑制するように作用すると考えられる. 低温の影響がどのような生理学的, あるいは内分泌学的機構を介して働いているかは, 今後調べる必要がある問題である.
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