研究概要 |
水中で非麻酔下のキンギョに体重100g当り100mUのサケ・カルシトニン(CT)を血管内に投与し, 血清PiおよびCa濃度が低下するか否かを3時間後まで調べた. すると1時間後に, 血清Pi濃度は約15%の低下を示したが, 統計的には有意でなかった. 次に, 体重100g当り3Uの極めて大量のCTを同じ条件下で投与し, 24時間後まで調べた. CT投与群の血清Pi濃度は1時間後に約10%低下し, その後さらに低下して24時間後には約20%の低下となった. しかしながら, 対照群においても同様な変化がみられた. また, 血清Ca濃度の低下にも効果は無かった(業績1). なぜ, CTが効果が無いかを明らかにする為に, 3UのCTを投与したキンギョの血清を直接ラットに投与して, ラットの血清Ca濃度の低下を調べることによってCTの活性の減衰の割合を調べた. その結果, 1時間後にはキンギョの血液中のCT活性は投与前の10%にまで低下しており, 12時間後では1%にすぎず, 24時間後では活性を検出できなかった. このことは, キンギョに投与されたCTは急速に不活性化されることを示している(業績2). 又, 本実験においても, 過去に報告したように, 魚体を麻酔して空気中で採血すると, 血清Pi濃度は採血する部位によって異なっていた. この理由を調べる為に, キンギョとクサフグに麻酔をかけ, 空気中で採血した. すると, 無呼吸のまま採血すると採血までの時間が長びくほど血清Pi濃度は上昇した. 1個体より鰓, 背大動脈, 心臓の順に採血するとPi濃度は心臓血において最も高かった. また, 心臓, 背大動脈, 再び心臓の順に採血すると, 最後の心臓血で最も高かった. 一方, キンギョの心臓にカヌラを入れ, 麻酔が覚めた後, 水中で呼吸できる状態で採血した場合は, Pi濃度はまったく上昇しなかった. 無呼吸下の血清Pi濃度の上昇は血中PH値の低下を伴っていた為, この現象は呼吸性アシドーシスと関係があると思われる(業績3).
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