1 マウス下垂体中葉の薬物による抑制解除 われわれが先に報告した実験的多飲に、更に薬物の組合せ処理を負荷した場合に、マウス下垂体中葉の分泌活性がどの程度まで亢進するかを、電顕レベルの形態計測法及び光顕レベルの計測により検討した。多飲条件は、5%グルコースに3%粉ミルクを加えた液を2週間、固形食の代わりに与えた。薬物として、メトロクロプラミド(D-2受容体拮抗剤)とイソプロテレノール(β-受容体作動薬)を用い、2週間腹腔内注射を行った。このとき下垂体中葉細胞はそれぞれの単独処理よりも組合せ処理のとき最も高い分泌活性能を示した。すなわち、粗面小胞体は対照群に比較して28.3%の増加、ゴルジ未熟顕粒は15.8%の増加を示したが、細胞質中の分泌顆粒は逆に48%と減少し、合成率を上回る放出率を示した。組織学的には細胞分裂活性が有意に上昇したが、2週間の実験期間では中葉の過形成には至らなかった。 2 実験的多飲条件にNaClを添加投与した時のマウス下垂体中葉細胞の変化の電顕による形態計測 マウスに固形食の代りに、5%グルコースを投与すること多飲多尿を引起し、このとき下垂体中葉細胞が機能亢進状態を示すことは前に報告した。この機能亢進は体液中の[Na]濃度の低下による可能性が考えられるために、飲水中にNaを添加して3日間投与した。NaCl濃度が0.225%、0.45%及び0.9%のいずれの場合にも、多飲(200-230%v/w)である限り、下垂体中葉細胞は機能亢進像を示した。すなわち、対照群と比較して粗面小胞体は265-291%増加を示し、分泌顆粒は逆に77-64%と減少した。このことは、多飲による中葉細胞の分泌機能亢進が必ずしもNaCl不足によるものでないことを暗示している。現在は多飲と尿素との関係を検討中である。
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