研究概要 |
有殻アメーバCochliopodium sp.は核周辺部に通常の固定(グルタルアルデヒド・OSO_4混合固定液)においても高電子密度を示す顆粒が多数認められる. この顆粒は分裂時に一旦消失するが分裂後再び核膜が形成される時期に再び核周に認められるようになる. 寒天培地に2nM濃度のEGTAを含ませて, その上で培養すると培養6時間で中程度の, 更に12時間で完全に顆粒は消失した. EGTA培地培養24時間後に再び通常培地にもどすと12時間後には顆粒の出現が認められた. これらの一連の変化をもとに, アンチモン酸カリ・OSO_4固定を行うと, 顆粒内には極度に高い電子密度を示す微細沈澱が認められた. この微細沈澱について分析電顕による解析を行った結果, PとCaの位置に高いピークが得られた. Pの位置における分析は, OSO_4を含まない固定時にも高いピークが得られたことから隣であることが確かめられた. また, Caの位置でのピークについてもアンチモンの標準×線エネルギー値を差引くことによって真のカルシウムの存在が確かめられた外, 冷凍置換法によってもCaピークを得ることができたことからも確かめられた. 同様の沈澱は, ゴルシ装置の膜層板端部やvesicle中に見られ, さらにこのアメーバに特有のscaleにも存在することから, 核周の特殊顆粒内に認められたCaは, scaleの素材としての蓄積である可能性が高いと考えられる. しかし, Golgi vesicleやscaleにはPは検出されない. 従って隣と共存(化合)する形が後に利用されるCaの素材としての蓄積型であろうと考えられた. 一方, この顆粒にはアルカリ性ホスファターゼの活性が検出された. その活性を阻害すると先に述べた条件での顆粒の再形成はおこらないことが明らかとなった. このことから, Caの蓄積のための燐酸の供給には, アルカリ性ホスファターゼが関与していることが示唆された. 次年度におけるネズミ陰茎骨における燐酸カルシウム蓄積について予備実験を行っている.
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