ラット陰茎骨末節は細胞外基質に多数の繊維をもつ繊維軟骨である。この末節繊維軟骨の原基細胞には雄性ホルモン受容体が存在し、末節の形成は雄性ホルモンによって引き起こされることが知られている。本研究では末節繊維軟骨の具体的な分化形質であるコラーゲンをマーカーとして、カルシウム沈着及びアルカリ性ホスファターゼ活性等形質発現機構を電顕的細胞化学的に研究した。末節原基は20.5日胎児の生殖結節を抽出し、in vitro器官培養後7、10、14、21日の各時期に種々な観察を行った。その結果、Typeエコラーゲンは、培養開始からわずかに認められ7日以降にはほとんど同程度の量を検出することができた。TypeIIコラーゲンは、培養10日目から発現しはじめ以後日をおって多量に出現した。しかも、TypeIIコラーゲン出現は、雄性ホルモン依存性であることが、培地へのホルモン投与実験であきらかとなった。このTypeIIコラーゲンの出現時期と時期を同じくしてアルカリ性ホスファターゼの活性が検出された。アリザリンSによるカルシウム検出の結果は、培養21日後に雄性ホルモン投与群で陽性となって来る。従ってカルシウムの沈着現象は、それに先立っておこるアルカリ性ホスファターゼの陽性と連動しており、しかもアルカリ性ホスファターゼ活性の出現が、カルシウム沈着よりはるか前におきることが明らかとなった。培地に雄性ホルモンを投与しなかった場合には、いずれも陰性であった。これらの結果から繊維軟骨におけるcalcificationh雄性ホルモンに依存するアルカリ性ホスファターゼの形質発現に依存することが明らかとなった。
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