生体内カルシウム蓄積機構の解明は、骨や歯の形成機構にかかわる重要な問題を含んでいる。本研究はその骨化現象の基礎的理解をより深めるために2つの実験系を用いて研究を進めた。その1つは、アメーバの特殊顆粒の動態に関するものである。他の1つはラット陰茎骨末節の繊維軟骨におけるカルシウム沈着に関するものである。アメーバの特殊顆粒は分析電顕による解析からリン酸カルシウムを含むことがわかった。更にEGTA処理培養によってこの顆粒の出現をコントロールすることができた。即ち、2mM濃度のEGTAを含ませた寒天上で飼育されたアメーバは、12時間後に完全に顆粒を消失する。EGTA処理24時間後に再び通常培地に移すと12時間後には再び顆粒の出現が認められた。これらの一連の変化と並行してアルカリ性ホスファターゼ活性も変動することがわかった。従ってアルカリ性ホスファターゼの変動とカルシウム含有顆粒の出現は連動している可能性が示唆された。一方、ラット陰茎骨末節の繊維軟骨は、その形質発現において雄性ホルモン依存性であることが知られている。繊維軟骨原基を器官培養し、雄性ホルモン依存性形質発現を検討した結果、アルカリ性ホスファターゼ活性の出現は、明らかに雄性ホルモン依存的であることがわかった。更にカルシウム沈着開始時期は、そのアルカリ性ホスファターゼ活性が出現する時期からやゝ遅れていることがわかった。従って繊維軟骨におけるカルシウム沈着はアルカリ性ホスファターゼ活性出現と連動している可能性が示唆された。これら2つの系におけるカルシウム蓄積は、いずれもアルカリ性ホスファターゼの活性出現と密接に関係していることが示され、生体内カルシウム蓄積を制御するための重要なファクターの一つはアルカリ性ホスファターゼであることが強く示唆された。
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