研究概要 |
1.淡水産および海産硬骨魚各6種, 軟骨魚2種の心臓組織の微細構造を観察し, 同時にそこに含まれる心房性ナトリウム利尿ホルモン様物質(以下, ANP)を免疫組織化学およびRIAにより調べ, さらに血中ANP量を測定し, 次の結果を得た. (1)すべての種の心房と心室で筋細胞は分泌顆粒を含むが, その数は心室では心房よりはるかに少なく, また概して海産魚より淡水魚の方が顆粒を多く含む. 各種は夫々2種ないしそれ以上のサイズの異なる顆粒を含む. (2)PAP法による反応は心房組織で強く心室でははるかに弱い. また概して淡水魚の方が海産魚より反応が強い. (3)RIAによると心房組織中のANP量は心室のそれの10〜100倍である. 概して淡水魚の方が海産魚よりANP含量が高い. (4)血漿中のANP量も淡水魚の方が海産魚より高い. 以上のような海産魚と淡水魚の差異の生物学的意義については今後研究する. 2.淡水適応のウナギを海水に移し, 心房筋細胞の微細構造およびPAP法によるANP量の変化を調べた. 海水に移して24時間後では対照群に比べ分泌顆粒が著しく少なく, 免疫反応の強さに対照群との差はないが, ゴルジ体が著しく発達した. これらの結果は塩濃度変化に対する適応現象にANPが関与している可能性を示している. 3.ヒキガエルの心房筋細胞に含まれる分泌顆粒およびPAP法によるANPを変態期前後を通して観察した. 分泌顆粒は外鰓完成初期(第28期)頃から出現し, 変態直前に急速にその数を増す. 免疫反応も顆粒の増加と平行してその強さを増す. 後肢形成前の幼生では直径115mm前後の顆粒がみられるが, 変態直前からさらに直径200mmの顆粒が現われ, 成体でもこの2種の顆粒が観察される. これら2種の顆粒の性質については今後, 研究を行なう.
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