最終年度にあたる本年度は、長野県中部および琉球列島の沖縄本島と渡嘉敷島で採集調査を行い多数の資料を得ることができた。採集した蛾類は標本作製後、ドイツ型標本箱に整理収納し、また、卵や幼虫を採取したものは、飼育を行ない成虫を確認する作業を行っている。前2年度に収集した資料も含め、暖帯林に固有な蛾や、移動性のある蛾を中心にして研究を進めている。 海外学術調査コロキアム「海外学術調査20年:成果と展望」(ヒマラヤ編)記録に、「いわゆるヒマヤラ系と呼ばれる蛾類の分布パタ-ン」を印刷した。これは昭和62年11月に開かれたコロキアムで口頭発表したもので、暖帯林に生息する蛾の分布パタ-ンを動物地理学的に解析を加えたものである。本研究を世界的視野からとらえている。 初年度に奄美大島で発見し、新種として発表したユワンカワスヨトウの追加採集記録を発表した。このグル-プの生活パタ-ンが、南限にあたる奄美大島でも保持されていることが明らかになった。 ヒマラヤから本州の伊豆まで広く分布するマダラガ科のオキナワルリチラシの亜種の問題について研究を進め、琉球列島での亜種の分化が、従来考えられていたものとは、かなり異なることが判明した。また、奄美大島産のものは独立の亜種と認められ、新亜種として命名された。 カラスヨトウ属のシマカラスヨトウ群に、第3の種がいることに気付き、論文の作製にとりかかっていたが、このほど、大英博物館に所蔵されているタイプ標本の写真を入手し、日本の種を正しく同定することができた。1種は未記載種であることがわかり、この新知見を入れて、投稿準備中である。
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