"早池峰構造帯"に分布する早池峰複合岩体は超塩基性-塩基性岩の混在岩として特徴づけられ、それは南部北上帯の古生界の基盤岩に位置づけられた。釜石地域の"早池峰構造帯"中には早池峰複合岩体が3列に分布し、それより"構造帯"は東部、中部および西部の3帯に区分される。東北日本弧は白亜紀火成活動の時期には1つのテレーンとして成立していたので、当地域の"早池峰構造帯"の発達史を考える上では、早池峰複合岩体の層位的位置と白亜紀火成活動直前の地層である大畑層の地質年代とその性格を明らかにすることが重要である。東部には早池峰複合帯の上位にデボン〜シルル系千丈が滝層が分布し、その上位には南部北上帯と同様な堆積相を示す、石炭系〜ペルム系の古生界が分布している。千丈が滝層の砕屑物中には塩基性岩類が含まれ、早池峰複合岩体が基盤をなしていたことは明らかである。中部には下位よりジュラ〜下部白亜系大畑層、下部白亜系仙磐山層、橋野層が分布する。大畑層は岩相により東方から、チャートを含む砂岩頁岩互層帯、中部の砂岩頁岩互層帯、そして西部の石灰岩を含む砂岩頁岩互層帯に区分され、これらは断層関係にある。チャートは礫ないしシートとして砕屑岩中に含まれ、連続性は認められない。チャートからペルム紀を示すコノドントが、頁岩からジュラ紀を示す放散虫が同定された。したがって、チャートは異地性岩体で、東方の堆積物は付可体堆積物と解釈され、"北部北上帯"と同様の堆積場を示す。中央部および西方の堆積物は総て陸源物資からなり、石灰岩体はオリストリスで、これらは堆積相から前弧海盆の堆積物である。したがって、釜石地域の"早池峰構造帯"はジュラ紀における前弧海盆から海溝に至る地帯が基盤を巻き込むスラストパイルをなしている部分であると結論された。その活動は大島造山運動時である。
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