1.乗鞍、焼岳、雲の平、鷲羽の各火山体の地質調査を行い、各火山の火山活動史を編むと同時に、有効な鍵層になりうるテフラ層の検出に務めた。乗鞍火山では南麓で厚い降下軽石堆積物を発見し、雲の平・鷲羽火山、焼岳火山では樅沢岳火山のA-Pm軽石層と同時に噴出した奥飛騨火砕流堆積物との層位関係を確認した。 2.大町テフラ層のD-PmおよびODp(中谷、1972)は降下単位層の斑晶鉱物組成変化から立山火山第2期の火砕流堆積物に完全に対比され、時間的には御嶽火山の新期御嶽下部テフラ層、すなわち継母岳火山群の時期にほぼ対比される。 3.規模の小さいテフラ層を検出するため長野市の更新世中期〜後期の湖成堆積物、高野層を精査した。このシルト質堆積物からは御嶽火山、立山火山の主なテフラ層と遠来の広域テフラ層5層がが発見されたが、乗鞍、焼岳、雲の平・鷲羽の火山からのテフラ層は発見できなかった。また、湖水中に堆積した水中1次テフラ層とも言うべき堆積状態が幾つものテフラ層に認められた。 4.乗鞍火山帯周辺の火山岩の年代値をテフラ層序と絶対年代測定値から求め火山活動の消長を検討した。全体的に約50万〜30万年付近と、約10万年前後から3万年付近に活発な活動期がある。乗鞍火山帯は奥飛騨火砕流堆積物の噴出のあと活動を始め、2つの活動期があった。古期の活動は約50万年前〜30万年前、新期の活動は約10万年前に始まり、御嶽、立山火山では約3万年前まで、乗鞍、焼岳火山では完新世まで続いた。新期の初期には火山毎にもっとも珪長質な噴出物が噴出された。約30万年前から約10万年前頃の噴出物は稀で火山帯全体の静穏期だったらしい。焼岳(と乗鞍)火山は完新世にも活動が続いた。御嶽、立山では最近3万年間は水蒸気爆発のみを行っている。
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