| 研究概要 |
古・中生代の島弧-海溝系に伴う収束域を反映した堆積体が各地で識別され, とくに西南日本では異地性岩体とマトリックス間の微化石年代差や古地磁気にもとづいて岩体の大規模な水平移動や地層の形成機構としての"付加テクトニクス"が強調されるとともに, 東北日本についても同様の形成機構による発達史が外挿されている. しかしながら, 北上外縁帯についてはこれらを検証する基礎的データの集積に乏しく, 本研究では先宮古純中生界の岩相構成・産状・分布-配列状態・地質年代を新しい視点から再調査するとともに, とくにチャート/石灰岩-緑色岩と周囲の陸源砕屑岩の相互関係の詳細をあきらかにすることによって, 地層の形成機構を含めた北上外縁帯の地質構造発達史を解明することを主題として調査・検討を行なった. 研究は未だ完結していないが, 本年度はおおむね下記の成果を得た.
1.西部(岩泉帯)では緑色岩-石灰岩(沢山川層-安家層:三畳紀コノドント)の巨大な岩体が周囲の砕屑性地層群と著しく斜交すること, およびチャート・石灰岩・緑色岩などの"異地性"小岩体を伴う高屋敷層(ジュラ系)がメランジェの特徴をもつことなどをあきらかにした.
2.東部(田老帯)ではチャート卓越層(陸中層群下部:三畳紀コノドント)が, より複雑な地質構造をもち, 多くの地区で周囲の砕屑岩類(ジュラ紀放散虫)と非調和的配列をなすことなどをあきらかにした.
3.これらの野外調査データおよび関連研究者との地質年代に関する討論を通じて, 研究地域(北上外縁帯)におけるチャート/石灰岩-緑色岩類が周囲の砕屑岩類に対して, "異地性"的であることをあきらかにするとともに, 前期白亜紀火山フロントをなす田老帯の安山岩〜石英安山類(小本層-原地山層)が下位の地層群(ジュラ系?)と非調和的に配列することをも予察的にあきらかにした.
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