1.山陰地域の陥没構造のうち、広島・島根県境に位置する作木コールドロンについて構造地質学的な研究を行なった。作木コールドロンの輪郭は、高角傾斜の断層によって囲まれた、一辺が8km程度の四辺形をなしている。これらの断層は、巾の広い破砕帯をもつ正断層の場合と、破砕帯がせまく、盆地外側に傾斜している逆断層の場合とがある。また、断層に沿ってしばしば花崗斑岩や石英斑岩の岩脈ないしは閃緑岩などの深成岩体が貫入していることがある。 2.マグマだまりの上昇にともなう陥没形成の機構を、地殼を塑性体とみなしたMohr-Coulombの降伏条件下で、三次元有限要素法により解析した。マグマの活動によって生じる地表の断裂には、放射状断裂や同心円状断裂が知られているが、これらの断裂の相互の切断関係や前後関係は充分には解明されていない。しかし、このことが実はコールドロンの形態を決定する重要な要因になっていると考えられる。 解析の結果、次のことが明らかになった。マグマだまりの上昇によって地表にドーム隆起が生じる。ドーム中央付近ではσ_3が垂直に近く、隆起の進行にともなって主応力の方向が刻々と変化する。弾性体のうちはσ_1が同心円の接線方向を向いているが、要素が降伏するとσ_1応力値の上昇がにぶくなり、σ_2とσ_1とが入れかわる。したがって、最初は地表中心部に放射状断裂が生じるが、隆起が進行するにつれて、応力が回転して同心円状断裂が発達するようになる。このことは、ドーム隆起中心付近では、単一の系統の断裂が形成されるのではなく、放射状断裂→同心円状断裂という順序で断裂が発達することを意味している。しかし、どちらの系統の断裂も正断層型である。作木コールドロンには逆断層もあるが、これはマグマ溜り収縮時の断層(komuro、1987)であろう。
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