研究概要 |
西南日本内帯(九州・山口)各地の第三系分布地域において地質調査を行い, 層序の確立と地域間での地層対比のための資料を得ると共に, 続成度検討のための堆積岩試料の採集を行った. 試料中から比重分離によって得られた沸石鉱物について偏光顕微鏡, X線回折による産状観察, 同定を行い, 沸石鉱物の層序的・地域的分布状況を検討した. その結果, 各地域ごとに明瞭な沸石鉱物種の層序的変化傾向が認められた. 即ちそれぞれの地域においては層序的に上位から下位へ向かって, 斜プチロル沸石から輝沸石, 輝沸石から濁沸石へと鉱物種が変化し, このことは埋没続成作用の結果として解釈される. 斜プチロル沸石と輝沸石のX線回折による区別については従来, 多くの議論があったが, 今回, 詳細な加熱実験に基いて検討し, 加熱安定性の差から斜プチロル沸石, 輝沸石タイプ1, 輝沸石タイプ2の3種に分類した. この分類区分は上述の鉱物種の層序的変化とも極めて調和的である. 一方, 各地域間についてみると, 産出沸石の地域的変化も明らかとなった. 即ち西九州の高島, 天草では北九州に比べて高続成度の沸石(主に濁沸石)を産し, 北九州においても内陸側から北西方へ向かって高続成度の沸石を生じる傾向が認められる. これらは一般に地熱地域で産する沸石鉱物の組合わせとは異なっており, 続成作用下での沸石生成条件の特異性やその地域的差異が推定される. 沸石と共に産する炭質堆積岩の石炭化度も沸石と同様の層位的・地域的変化傾向を示しており, 第三系の続成変化を考慮する上で有効な指標となり得るものと考えられる. 今後は更に2, 3の地域からの試料の追加を行うと共に, 沸石続成作用の地域的変化を支配した地質的要因について考察することが必要である.
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