研究概要 |
大規模なプリニー式噴火では噴出物を火口の遠方まで飛散させるため, 火山体の形成という点では, より小規模であっても溶岩の流出を伴う活動の方が重要との視点で, 代表的な火山を研究した. その結果, 上記の仮説は多くの火山において概略成立することが判明した. 溶岩の流出を伴う山頂活動で放出されるテフラは火山砂で特徴づけられる. 活動は一般に長期間にわたるため, 火山砂層の等層厚線は火口を中心にほぼ同心円状を描き, 火山体に近づくにつれ層厚・粒径ともに増加し, 溶岩と互層するようになる. また腐植を挟んで何層か識別されることもある. この場合, 火山体の成長を伴う活動が複数回あったことを意味している. 桜島火山においては, 火山砂層が9層識別できた. これらは南岳が成長する時期に噴出したものである. 1955年以来の山頂火口での断続的な噴火でも主に火山砂が放出されている. しかし溶岩は流出していない. このことは火山体がある一定の高さに成長すると, 溶岩として噴出する率が相対的に低下することを示唆している. 霧島火山の高千穂峰の形成時期には, 「牛のすね」火山灰層が堆積したが, この層間には桜島火山ほど顕著な腐植層は存在していない. すなわちかなり短期間に火山体の大半が形成されたことを示している. 東北地方の蔵王火山の周辺でも, 同様な火山砂層が広域に分布するのが確認された. 一方, 北海道の樽前火山ではプリニー式噴火による厚い降下軽石層が4層堆積したのみで, 顕著な火山砂層は発見できなかった. このことは樽前火山の体積が他と比較しても小さく, 上記の仮説と調和的である. 現在, マグマの組成と噴火様式がどの程度対応するものか調査中である. 桜島火山においては, 火山砂の噴火はある組成付近に限定されるようだが, 必ずしも他の火山にそのまま適用できるわけではない. 今後, 火山ごとの特徴を明確にしていく必要がある.
|