今年度は昨年に引き続き、代表的な火山についてテフラの野外調査とともに、室内での検討を行った。野外調査の対象は、霧島火山の韓国岳薩摩硫黄島、口永良部島であり、九重火山、阿蘇火山も概査した。 火山体の成長と関連して放出されたブリカノ式噴火のテフラは、大半の火山において確認することができた。ブリカノ式噴火のテフラの場合、一般に活動の継続期間が長いため、テフラの分布は風向の年間頻度分布と一致し、やや南東にのびた同じ円状のisopachmapを示す。なお薩摩硫黄島の火山では、火山体の成長率は、マグマの噴出量と既存の火山体の高度に密接に関連していることが明らかになった。 プリニー式噴火で成長した火山として、霧島火山の韓国岳を対象として調査・検討を行った。この場合、プリニー式噴火は少なくとも5つのphaseからなり、山体が最も成長したのはプリニー式噴火の最盛期ではなく、準プリニー式〜ブルカノ式噴火のphaseであることが判明した。前年度に調査した樽前山では露出が悪く詳細な検討ができなかったが、テフラの特徴が類似していることから、韓国岳とほぼ同様な成因であったものと推定される。 噴出物の形態は噴火様式に対応して多様であった。火山砂は固結したマグマの機械的な粉砕により形成されたものであり、やや多孔質なものから破断面をもつものまで変化にとむ。ただし口永良部島の火山砂の中には、繊維状火山ガラスが見られる。これは他の火山砂と比較して極めて特異であり、その成因が注目される。 テフラ及び熔岩の化学組成は火山ごと異なっており、特徴的なことは発見できなかった。ただし韓国岳においては、テフラ中の火山砂は軽石と化学組成が異なり、火砕丘の構成物の組成と類似していることから、テフラと火砕丘との対応が可能となった。
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