火山体の形成期に放出されたテフラの特微を総括する目的で、日本の代表的な火山についてテフラの野外調査とともに、室内での形態・化学組成の検討を行った。調査対象は北から樽前山、蔵王山、九重山、阿蘇山、霧島火山、桜島火山、薩摩硫黄島、口永良部島の火山である。火山ごとテフラの性質は極めて多様であった。そのため単純に総括することはできず、ブルカノ式とプリニー式の2つの噴火様式の場合にわけて検討することにした。 ブルカノ式噴火のテフラは、大半の火山において確認することができた。この場合、一般に活動の継続期間が長いため、テフラの分布は風向の年間頻度分布と一致し、やや南東にのびた同心円状のisopach mapを示す。なお薩摩硫黄島の火山では、火山体の成長率はマグマの噴出量と既存の火山体の高度に密接に関連していることが明らかになった。プリニー式噴火の例では、山体が最も成長したのは噴火の最盛期ではなく、準プリニー式〜ブルカノ式噴火のphaseであることが判明した。プリニー式噴火の継続時間はブルカノ式噴火にくらべ短いのが一般的なようであり、isopach mapは必ずしも同心円状を描くとは限らない。 噴出物の形態も噴火様式に対応して多様であった。火山砂は固結したマグマの機械的な粉砕により形成されたものであり、やや多孔質なものから破断面をもつものまで変化にとむ。ただし口永良部島の火山砂の中には、繊維状の火山ガラスが見られる。これは他の火山砂と比較して極めて特異であり、その成因が注目される。 テフラ及び溶岩の化学組成は火山ごと異なっており、特微的なことは発見できなかった。ただし韓国岳においては、テフラ中の火山砂は軽石と化学組成が異なり、火砕丘の構成物の組成と類似していることから、テフラと火砕丘との対応が可能となった。
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