研究概要 |
1.秩父帯内・外帯のチャートでは, 続成・変成作用による再結晶が進んでおり, 堆積時の元素分布の推定が困難である. 一方, 四万十帯のチャートには保存状態の良好なものがあって, それは続成過程の研究に適している. 2.反射電子による組成像観察によると, 四万十帯のチャートではシリカ, カリウム, マンガンなどの元素分布は不均質で, 鉱物としてはそれぞれ石英, 粘土鉱物, マンガン酸化物またはリシオフォライトなどに対応する 3.シリカは放散虫などの珪質生物起源, カリウムは風化物質で陸源, マンガン鉱物は海水晶出起源のものであり, チャートはそれらの混合物である. 4.さらに四国の三宝山帯において, チャート中に燐酸塩鉱物が発見され, 続成過程でPO43-イオンの挙動も重要であることがわかった. 5.非晶質シリカがより粗粒の石英へと再結晶する続成過程において, マンガンは石英中に入らないために再移動・濃集し, 燐酸イオンはフッ素イオンなどとともにシリカの溶解に寄与したことが予想される. 6.非晶質シリカの再結晶と組織変化を検討するために, 静置式オートクレーブを製作依頼し購入した. 最高使用圧力300kg/cm3, 最高使用温度300°Cの条件で, 容量は0.1lのものである. 性能確認のため数度にわたる水圧・気密試験を行い, 実験可能であることを確かめた. 7.現世の珪質海綿の骨針を試料として再結晶の実験を行い, 短時間であっても石英化し, さらに組織も変化することが確かめられた. 温度条件を変えながら実験を継続中である.
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