研究概要 |
62年度は本研究の目的である最上部白亜径の放散虫生層序を明らかにするため, 連続的な層序断面の期待される北海道北部の中頓別地域の函渕層群について重点的に野外調査を実施し, 各ルートから微化石抽出のための泥質岩サンプルを多量に採集した. これらの試料をフッ化水素酸により処理し, 放散虫化石を抽出し, 走査電顕下で検鏡・同定した. また, 丸瀬布・滝ノ上地域の日高累層群, 遠軽東部山地の湧別層群, 厚岸地域の根室層群からも同様に泥岩サンプルを採集し, 放散虫化石の抽出を行なった. その結果, 中頓別地域の函渕層群の放散虫化石の層位的消長分布から前期〜中期カンパン世を示準するProtoxiphotractus perplexus帯と, 後期カンパン世〜早期マーストリヒト世を示準するClathrocyclas gravis帯の2化石帯が設定できる見通しがえられた. とくに後者の化石帯は北日本においてはじめて設定される化石帯である. マーストリヒト世後期の化石帯についてはなおも調査・検討が必要である. また, 日高累層群と湧別層群からカンパン世後期〜マーストリヒト世早期を示準するArnphipyndax fylotus-Clathrocyclas diceros群集が検出された. 63年度にはこれらの群集構成について詳細に明らかにし, カムチャッカ・サハリン地域や西南日本, 北米, アラスカ地域など他地域の白亜紀末期の放散虫化石群集との比較検討を行ない研究の総括を行なうものとする.
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