研究概要 |
新潟県青海石灰岩, 岐阜県吉城郡福地付近の一の谷層, 福地層, 高山市北方の荒域川層, さらに大垣市赤坂石灰岩などのデボン系・石灰系・二畳系化石を新たに採集すると共に, 従来からの多くの採集品の再検討を古生物学的に行った. これらをわが国と隣接する中国, 東南アジア諸国の同時代の化石動物群と古生物地理学的見地から比較検討した. これらのうちこれまで判明した新知見は大きく二点上げられる. 1)一の谷最上位から採集されたカイメン化石は, シスタウリーテス属とアンブリシホネエラ属のそれぞれの一新種であることが判明した. 前者の産出は古生物地理学的に特に興味深く, これまで模式種が一種だけオクラホマの上部石炭系から知られているにすぎなかった. このような属の新種が代表的なテーチス化石群の一つであるアンブリシホニエラ属と共存することは, 今後この属が各地から産出することが期待されるばかりか, その分布を知ることが古生物地理学的に意義深いものとなってきた. 2)一の谷層のサンゴ化石の研究によって新たに数種類のものが追加されて, 古生物地理学的に検討された. 特に下部層上位に大型群体を形成するチーテェテス, 単体小型のシアタクソニア, 上部層の大型カニニアなどの諸属が産出し興味深い. また最下部から多くのアラクロラズマの新種が加った. これらを総合すると, 下部はいわゆる北方系を混在する南中国型サンゴ群に, 下部層の上位と中部層には中国-朝鮮地塊のフォーナと共通する種, 上部にはウラル区に近似するサンゴ群が含まれるという興味深い結果が得られてきた. しかし有孔虫化石群は典型的なテーチス化石群を含んでいて, これらの混在型群集のより詳細な解析が必要となってきた. また青海石灰岩の南に分布する小岩体の"小滝層"のサンゴ化石についても検討が進んでいる.
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