研究概要 |
本研究では本邦で初めてTECHNOSYN CATHODE-LUMINESCENCE 8200 MarkII型を使用した. 本機器は今までに日本の他の研究機関で購入使用されているNUCLIDE社LUMINOSCOPEに比べ, 安全性をはじめ構造上からも機能上からもはるかにすぐれており, しかも経済的である. 従来第四紀の炭酸塩岩の研究に陰極線ルミネッセンスを適用した例は皆無で, 本研究で初めて更新統炭酸塩岩のダイアジェネシスを検討し, 現在迄に次のような知見を得た. 1.現在方解石である化石粒子は, 軟体動物殻>無節・有節サンゴモ片>コケムシ殻>底生有孔虫殻(小型>大型)>ウニ類殻片>イシサンゴ片の順に発光段階がbrightからdullまで変化する. 2.wackestoneからpackstone-grainstoneへ移化する場合, 石灰泥基質の減少につれ発光が増す傾向がある. また化石粒子内の内部堆積物の石灰泥は基質全般のものに比べて, より発光する傾向が認められる. 3.セメントに伴う発光には, スパーセメントの結晶粒境界をきつて発光部の認められる場合がある. またブロック状葉片形セメントの上半部のみが発光する例もある. とくに, 不整合の推定部で, 内側から外側にむけて堆積粒子・灰色のisopachousセメント・赤色シルト層・オレンジ色発光層・黒色の無発光ブロック状葉片形セメントの順の"セメント層序"が認定でき, 海水中より地表に乾出陸化の不整合関係を裏づけることができた. 以上のように方解石の陰極線ルミネッセンス像はオレンジ色から灰色をへて黒色(無発光)まで識別認定できるが, 第四紀生物源炭酸塩岩のダイアジェネシスの解明に極めて有効な研究手段であることが明らかになった.
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