研究概要 |
本研究は, 本州南岸の沖合から数本の海底コアを採取し, それらに含まれる各種微化石[浮遊生有孔虫(大場), 底生有孔虫(加藤), 石灰質ナンノプランクトン(高山), 珪藻(谷村), 放散虫(山内:研究協力者)]の群集解析, 有孔虫殻の酸素・炭素同位体比(大場)および火山灰の年代決定(大村)を行って, 第四期後期における黒潮前線の移動と海洋古環境の復元を行うことを目的としている. そのために, 昨年度と本年度の初めにおいて, 大場は東京大学海洋研究所所属の白鳳丸の研究航海に参加し, 駿河湾沖(KH-86-5, P-2およびP-3)や沖縄東方海域(KH-87-2, CB-4およびCB-6-8)から数本の海底コアを採取した. その内, 本年度はとくに海底コアP-2の詳細な研究を, 上述の研究分担にしたがって行った. その結果, 黒潮前線は約1万3千年前に遠州灘沖を, 約1万2千年前に駿河湾沖を通過し, 1万年前には房総半島の勝浦沖に達したということが明らかになった. また, 大村は海底コアや陸上堆積物に含まれる火山灰の年代決定を^<238>U-^<230>Th法を用いて行い, 重要な火山灰の一つである大山倉吉火山灰の噴出年代を約9万5千年前であると決定した. さらに, 本年度初頭の航海(KH-87-2)において, 本研究を飛躍的に発展させることができる日本海溝に設置されたセジメント・トラップの貴重な研究試料を回収することに成功した. そこで, 谷村と大場はそのトラップに捕集された珪藻の群集解析と浮遊性有孔虫殻の酸素・炭素同位体比の測定を行い, 群集の季節変化や生息深度の推定など本研究にとって基礎的なデータの集積も行った. なお, 本年度は, 銭洲海台のコア(KH-79-3, C-4)や沖縄東方のコア(KH-87-2, CB-4)についても解析中である.
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