1)各種のカキについて、軽量構造の存在とその形態を調査した。その結果、これまでカキの殼の軽量構造として、空室構造のほか、方解石の薄板状結晶が面と辺を接するようにして構成しているボックスワーク構造、および、規則的な空洞構造からなるハニカム構造とが知られていたが、これらに加えて、空室の両壁に樹状あるいは針状の微細構造が成長したタイプ(クリスマスツリー型構造と仮称)を発見し、これを走査型電顕で観察、記載した。また、クリスマスツリーを含め、ボックスワーク構造、ハニカム構造、空室構造、の形成機構に関する考察を行った。 2)カキ類以外の様々な化石及び現生無脊椎動物について、同様な軽量構造が存在するかどうか調べるため、原生生物の有孔虫類、海綿動物、腔腸動物のサンゴ類、こけむし動物、腕足動物、節足動物の甲殼類、軟体動物の二枚貝類のさまざまな種類、頭足類、ロストロコンキア類など広範な動物の骨格、殼の化石あるいは現生の試料について走査型電顕による観察、文献による調査を行った。その結果、きわめて多くのグループに同様な構造が現れることが確かめられた。しかし、その機能的意義は、一部のものを除くとカキ類とは異なる可能性が高い。また、これらの多様な構造の形成機構について、主としてドイツ及びアメリカの専門研究者と意見の交換を行った。 これらの調査から、骨格・殼の機能形態を考察する上で、それらをつくるメソスコピックな構造の研究が重要であることが明らかになった。 3)本研究の成果を学術論文として発表するため、原稿の執筆を行った。現在、図は完成したが英文を修正中である。
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