日本の非海成白亜系は海成層とさしちがえるためアジア大陸の非海成白亜系の年代決定及び対比に重要な位置を占める。このうち大陸との対比に重要なのは手取層群石亜層群であるので、62・63両年度に亘り白山周辺の同亜層群及相当層の化石採集及び貝化石層序の検討を行った。その結果 1.従来赤岩亜層群に含められていた勝山地区の北谷互層から今回の調査によりPseudohyria matsumotoiやNippononaia tetoriensisをTrigonioides tetoriensisやPlicatounio naktongensis及びNagdongia soniと共に採集した。 2.採集したTrigonioidesはhingeの観察よりすべてWakinoa亜属に含まれるべきことが確認された。 以上の事実に従来知られている資料を追加して考察すると、手取層群の石徹白亜層群の桑島互層及びその相当層である伊月層、大黒谷互層は、勝山地区の赤岩亜層群の北谷互層に対比するのが最も妥当であることが明らかになった。又、北谷互層産の化石種と韓国洛東亜層群のYeonhwadong、Hasandong及びDongmyeong層最下部の化石種が略対比されることが明らかになった。 中国は広大な地域に同時代の化石を多産するが、対比のための的確な資料の入手が困難であるため対比は行わなかった。 なお、今回の調査により手取川流域の瀬戸野で海生のIsognomonや汽水のSphaerioidesと考えられる化石及び小型の"Sphaerium"等を多数採集した。特に"Sphaerium"化石はT.P.N.化石を産しない国内の非海成白亜系間の対比や中国との対比に重要であろう。
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