研究概要 |
日本海の沿岸に発達するグリンタフ下部層(中新世前期)に含まれる植物化石および共産化石を調べ, その層序学的位置づけと陸域を中心とした古地理を明らかにするため, 秋田県男鹿半島, 山陰, 壱岐島の野外調査を行った. また, 山形県西田川炭田のグリンタフ層産植物化石を検討した. 主な成果は次のとうりである. 1.グリンタフ下部層の模式的発達地である男鹿半島において, 阿仁合型フローラ(中新世前期の前半)を含む門前層に, コンプトニアを含む層準が発見され, より新期の台島型フローラ(中新世前期の後半)の両者が層序的に近接することおよび門前層の改訂が必要であることが分った. 2.台島型フローラの産出層準に新旧2層準が確かめられた. 3.男鹿半島におけるこれらの事実は, グリンタフ下部層の細分に新基準を提供するものと考えられる. 4.中新世前期フローラにみられる南北緯度差は, 山陰・壱岐島の調査により, 当初予想したよりも顕著でない. 5.樺太〜北海道〜本州中北部のフローラには, 温暖系植物の含有率に明らかな南北差が認められる. 6.山陰・壱岐島のフローラに温暖要素が顕徴でないことは, 日本海の生成と関連した古地理的環境が影響しているものと考えられる. すなわち, 7.暖流の影響が予想よりも低い(山陰)か, より内陸側(壱岐島)という古地理が推定できる. 以上の成果に加えて, 隣接する朝鮮半島, 沿海州, 樺太の同時代フローラについては, 既知資料を収集し, 比較層序・古植物学的な検討を行っている. また, 植物化石以外の古生物学的検討は各分担者によって進められている.
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