研究概要 |
筆者は, 津軽堆積盆地に分布する泥質岩の石油根源岩能力の評価を目的として本研究を進めている. その第一歩として, 津軽盆地内の鯵ヶ沢, 小泊, 金木, 大鰐, 浅虫の各地に分布する新第三系泥質岩の野外調査と分析試料の収集をおこなった. その後, 分析試料から薬品を使い化学的に不溶性有機物トロジェンを分離し, そのケロジェンの元素分析, 核磁気共鳴分析および生物顕微鏡によるビジュアル・ケロジェン分析を続けている. これらの分析結果と既に報告のある基礎試錐「西津軽沖」, 鯵ヶ沢, 蟹田, 五所川原などのデータを総合し, 津軽盆地の石油根源岩の概略評価をおこなった. その内容は, 第8回有機地球化学研究会(1987年8月, 松江)と第95年日本地質学会年会(1988年4月予定, 沖縄)でそれぞれ発表し, その一部はResearches in Organic Geochemistry誌に投稿中である. 発表内容を以下に記す. 津軽盆地新第三系に含まれるケロジェンの型は, 大部分III型またはII-III型で石油の生成には適さない. しかし, 盆地中央部〜西南部にかけて分布する大童子層と赤石層は, I-II型のケロジェンを含み, 石油生成型有機物に富む. 大童子層と赤石層は, それぞれ秋田県男鹿半島の女川層と船川層下部に対比されたおり, 両層の有機熟成度は石油生成帯の入り口(ビトリナイト反射率で0.5%)近くに達している. また, 有機物含有量も他の試料と比較して高いので, 大童子層と赤石層は良好な石油根源岩と評価できる. 今後は, 調査地域を拡大し, 分析試料を増やし, また他の分析法を加えるなどして, より確実性の高い津軽盆地石油根源岩の評価をおこなっていきたい.
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