報告者は、津軽堆積盆地に分布する新第三紀泥質岩の石油根源岩能力の評価を目的として、本研究を進めてきた。昭和63年度には、昭和62年度にひきつづき、津軽堆積盆地各地、特に津軽半島地域において、分析用泥質岩試料の採集をおこなった。ならびに、実験室において、泥質岩から不溶性有機物ケロジェンの分離をおこない、さらにケロジェンの元素分析、ビジュアルケロジェン分析、核磁気共鳴測定、ビトリナイト反射率の測定をおこなってきた。ビジュアルケロジェン分析については、今回新たにとり入れた分析法であり、試行錯誤を繰り返し、本年度後半になりようやく方法を確立することができた。その適用例として、まず津軽盆地の鰺ケ沢地域の試料と、比較のために男鹿半島の試料を分析したところ、元素分析の結果ときわめてよく調和することが判明した。ビジュアルケロジェン分析は、元素分析に比較し、試料が少量でよいこと、前処理が簡単であること、より定量的な扱いができることなど利点が多い。津軽盆地全体にわたるビジュアルケロジェン分析が可能となるよう現在分析を進行中である。核磁気共鳴は、その装置が弘前大学にはないため、北海道大学工学部へ測定を依頼した。ビトリナイト反射率も同様に帝国石油株式会社技術研究所へ測定を依頼した。核磁気共鳴、ビトリナイト反射率ともに測定依頼数に限度があるため、鯵ケ沢地域の試料を中心に測定するようにした。これらの分析結果を総合し、ケロジェンの量型(根源物質)、熟成度から石油根源岩評価をおこなったところ、津軽盆地では、盆地中央部付近に分布する「女川層」〜「船川層下部」層準の泥質岩が、最も有望な根源岩であることが判明した。その内容については、一部をResearches in Organic Geochemistry誌に公表し、また日本地質学会(1988年4月那覇、1989年5月水戸)で発表し、現在学会誌へ投稿するための原稿を書いているところである。
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