報告者は、津軽堆積盆地に分布する新第三系泥質岩の石油根源岩能力の地化学的評価を目的として、本研究を進めてきた。これまでに野外調査をおこない多数の泥質岩試料を採集し、その中から津軽盆地で104個、比較のための男鹿半島で7個の泥質岩を分析に供した。泥質岩から酸処理により無機鉱物を、ジオキサン抽出で可溶性有機物を除去し、不溶性有機物ケロジェンを分離した。このケロジェンを、元素分析・ビジュアルケロジェン分析・核磁気共鳴測定・ビトリナイト反射率の測定により分析し、泥質岩に含まれる有機物の量・起源物質(型)・熟成度を調べた。具体的には、ケロジェンの回収量から泥質岩の有機物含有量を推定した。また、元素分析の結果を、水素対炭素、酸素対炭素のVan Krevelemダイヤグラム上にプロットすることにより、ケロジェンの起源物質(型)を推定した。ビジュアルケロジェン分析により、ケロジェンの組成を推定し、その石油生成能力を評価した。プロトン-核磁気共鳴のスピン-格子緩和時間、およびビトリナイトの反射率からは、ケロジェンの熟成度を推定した。鰺ヶ沢地域の試料については、比較のため無機の珪酸鉱物の続成変化も調べた。 以上のような分析結果を総合し、さらに既に報告のある資料とも比較・検討した。その結果、津軽盆地の石油根源岩を地化学的に評価すると、現時点で最も有望な石油根源岩としては、盆地中央部付近に分布する大童子層(女川層に対比される)と赤石層(船川層下部に対比される)の泥質岩があげられる。 津軽堆積盆地全体の石油根源岩評価をするには、分析資料がまだ不十分である。今後は、分析試料を増やし、調査密度を上げて、さらに精度の高い根源岩評価を目差したい。
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