研究概要 |
氷長石、ザクロ石やエピスチルバイトなどの沸石にはさまざまな分域構造があり、その成因をすでに明らかにしていたが、最終年度にはさらに、幾つかの鉱物(例えば、adularia)の組織の研究に加えてその成因を一層明確にした。結晶の内部のイオンは周りのすべてのイオンと電気的に釣り合っていなければならない。しかし、結晶表面に露出しているイオンは、その下やステップの側面上のイオンとのみ釣り合っておればよい。したがって両者は本来等しくとも、位置的に必ずしも等しいとは限らない。むろん上からイオンが降り注ぐ。そして三次元的に成長する過程で結晶面上のイオンは拡散し、三次元的に安定な位置に落ち着く。すなわち内部のイオンと同じになる。もし成長温度が低くて成長速度が速ければ、イオンが三次元的に拡散する時間的ゆとりがなく表面上にて釣り合った状態でイオンの配列は凍結されてしまい、それが次々に積み重なって準安定な三次元の構造が作られる。結晶面が異なれば表面に露出している原子の配列もまた異なる。したがって、表面上での釣り合いの状態も、また結晶面ごとに違ってくる。その結果生じるのが構造分域である。 最終年度に研究したものを次に述べる。氷長石は(010)面を持たないカリ長石であるが、(010)面を有する特異な氷長石をしらべたが、これもまた一般的な氷長石のものに似た組織を持ち、非平衡な状態で生じた準安定な長石であり、上に述べた機構で説明できる。ザクロ石もまたAl,Feの秩序-無秩序構造からなり、秩序構造のものは三斜晶系まで対称が低下している。 以上の通りに、この3年内に鉱物の光学異常、原子の秩序-無秩序構造、分域構造の成因を明らかにすることができた。
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