研究概要 |
9.研究成果の概要(当該年度のまとめ) 1)産状:斑れい岩類は捕獲岩状・壁岩中の岩脈・連続的・キュムレート状などの産状を示す. 大部分の斑れい岩類は花崗岩類よりも早期の活動であり, 他は一連のものもある. 2)鉱物組合せ:I, II, V帯で最も苦鉄質な組合せは角閃石+かんらん石±単斜輝石±斜方輝石. III, IVおよびVI帯の岩石では単斜輝石, かんらん石黒雲母単斜輝石斑れい岩などで, しばしばカリ長石や斜方輝石を伴う. 角閃石斑れい岩はいずれの帯にもみられる. I, II, V帯のかんらん石はFo55-79で, 共存する斜長石はAn85-98である. 角閃石は褐色のパーガス閃石質で, いずれもマグマ起源のものである. III, IVおよびVI帯のかんらん石はやはりFeに富むが, 角閃石を含まないかごく少量で, 共存する斜長石はAb成分に富む. 3)微量成分:東北大学理学部の電子ライナックを利用した光量子放射化分析の結果, インコンパティブル元素の量は各帯ごとに特徴があるが, 花崗岩類のパターンは基本的にはどの帯のものも同じで, LIL元素に富み, HFS元素に乏しく, 何れもNbの負異常が認められる島弧あるいは活動的大陸縁辺部の火山岩と同じ特徴を示す. 斑れい岩類では構成鉱物の集積などによるモードの変化を反映して不規則なパターンを描く. 斑れい岩類の中で, K, Rb, BaなどがIV帯とVI帯で多い. 斑れい岩類の中で分化の進んだものは花崗岩類のパターンに類似してくる. 特に興味のあるものは, IV帯の斑れい岩類はほぼ花崗岩類閃緑岩のパターンに重なること. VI帯のものはP, Zr, Tiでやや異なっているがNbの負異常も明瞭であり, かなり花崗岩類のそれと一致する点である. IV帯のアルカリに富む斑れい岩は, 一部の岩石ではショショナイトの範疇にはいる. また, この岩石の微量元素パターンはNbの負異常があることから, 成熟した島孤あるいは活動的大陸縁辺のものと考えられる. そしてIV帯の花崗岩類は斑れい岩類と一連であることも, そのパターンから云える. VI帯の斑れい岩類と花崗岩類もIV帯のそれとかなり似ている.
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