研究概要 |
1)他地域および他の時代のものとの比較:本年度は北上山地と比較の意味で、阿武隈山地の斑れい岩類についての調査も行った。今回は北部阿武隈山地を中心に調査した。福島県川俣付近はおもにチタン鉄鉱系列のもので、斑れい岩は捕獲岩状になっている。さらに、花崗岩類は泥質岩を含むもの、輝緑岩質岩石を含むものがある。これらと、斑れい岩との成因関係は、北上山地の斑れい岩との比較も含めて、今後の問題である。さらに、福島県滝根地域のルーフペンダント状に産する石灰岩・チャートラミナイト質岩石・塩基性岩・超塩基性岩などの組み合わせをなす岩石の位置付けについて検討を加えた。これらの塩基性岩の帰属は本地域の構造区分を決める上で重要である(永広・蟹沢・竹谷・印刷中)。 さらに、北上山地の「早池峰構造帯」の塩基性岩についても、岩石学的検討を加えて発表した。白亜紀斑れい岩が島弧的性格をもつのに対して、「早池峰構造帯」のものはオフオライト的性格をもつものである。(永広・大上・蟹沢,1988)。 2)鉱物組み合わせ:北上山地の斑れい岩類についてはすでにかなり資料が蓄積し、一部は既に公表した(蟹沢・片田,1988)が、加えて束稲岩体などの斑れい岩についての検討を行っている。また、遠野岩体を中心により精密な岩石学的検討を加えつつある。 3)微量成分:北上山地の花崗岩類・斑れい岩類についてはすでに多くの分析を行っており、これに加えて、第四紀のマグマ溜まりの中の集積相の研究から、斑れい岩マグマの生成が推測できないかということで、安達火山のマグマ溜まりの中の集積経過を微量成分の挙動から推論した。北上山地の白亜紀花崗岩類や斑れい岩類は島弧的性格をもつことから、これらの研究は重要な資料を提供した(蟹沢・片田,1988;Kanisawa and Yoshida,1989 in press)。
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