研究概要 |
天然の粘土鉱物(層状珪酸塩)のうち比較的大きな単結晶(8mm×8mm×3mm)で産出し, 層間陽イオンの置換が比較的容易に行なえその密度も比較的高いバーミキュライトを選んで, 液体ヘリウム温度から室温までの静磁化率の測定および液体ヘリウム温度域(1.5〜4.2K)での交流磁化率の温度依存性の測定を行ないその磁性を研究した. バーミキュライトはMg原子を中心に持ち酸素原子を頂点とする八面体が二次元的に層状に連なりその層をSi原子またはAl原子を中心に持ち酸素原子を頂点とする四面体の層が上下からサンドイッチのようにはさんだ構造を持ちそれが間隔をあけて重なってその層間に陽イオンや水分子(一層または二層)がインターカレイトされているような構造となっている. 米国テキサス州ヤーノ産バーミキュライトでは層間陽イオンはMgであるが八面体位置に3%程度のFe原子が含まれている. この試料の静帯磁率の温度変化をキュリーワイス則にあてはめることによりFe原子の状態がFe3+であることを決定した. この天然の結晶の層間のMgをCo, NiあるいはCuで置換する処理を行ないそれらの磁化率を測定した. CoあるいはCuをインターカレイトした試料では磁性イオン間の相互作用は非常に弱いことが判明したがNiをインターカレイトした試料の場合のみかなりの大きさの相互作用(ワイス温度にして磁場がC軸およびそれに垂直な方向でそれぞれ12±3Kおよび10±2K)が存在し層間の水分子を減らすことにより相互作用が強まる(ワイス温度がそれぞれ19±2Kおよび16±3K)ことを見出した. これは水分子を減らすことにより層間が近くなり相互作用が強くなるためと考えられる. Niの場合交流帯磁率の温度変化においてグラファイト層間化合物におけるのと同様の逐次磁気相転移によるものと思われる異常を観測した. 今後この系の強磁場磁化過程を調べ相互作用の性質をさらに明確にしたい.
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