研究概要 |
東北日本海側の広範囲の地域に出現している中期中新世広域玄武岩のうち, 新潟県下の掘削試料および弥彦山塊を構成する玄武岩・ドレライトなどの全岩主化学組成と構成鉱物の化学組成を検討した. その結果, 弥彦ドレライトはアルカリ玄武岩系列に属し, 他の玄武岩はソレアイト系列に属することが明らかとなった. また, 各地の広域玄武岩の全岩主化学組成について整理してみると, この玄武岩について従来いわれていたような島弧を横断する方向でのK_2OやNa_2O+K_2Oの規則的な変化は認められないことが明らかとなった. また, この広域玄武岩中には, 島弧性ソレアイトの他にTio_2に富む玄武岩(海洋性ソレアイトに類似する)が諸々の地域からみいだされてきている. 筆者が共同研究者とともに行った, 東北日本北部・青森県に広く分布する中新世火山岩271個の分析結果によると, 中期中新世の火山岩では, K_2OやNa_2O+K_2Oの島弧横断方向での規則的な変化は認められないが, 後期中新世火山岩(約8Ma以降のもの)では, 北上帯(太平洋側)から奥羽帯をへて出羽帯(日本海側)の火山岩にむかって, K_2O, Rb, Srが漸次増加していることが明らかとなった. 筆者は, これらの諸事実を考慮し, 中期中新世の海洋性火山岩に類似する火山岩の起源は, 東北日本が現在の位置よりも西方にあった時に東北日本下に上昇してきたマントルダイアピルに由来している可能性を論じた. また, 東北日本は中期中新世の末期には現在の位置に達し, その直後(約8Ma以降)から島弧・海溝系が形成されるようになった可能性を論じた. ごく最近になって, 日本海東縁に浮ぶ飛島の玄武岩(約23Ma)の記載岩石学を行った結果, この玄武岩は島弧性のものとは異なり, T-typeMORBまたはP-typeMORBに岩石学的性質が類似していることが明らかとなり, この玄武岩産出の地質学的意義を論じた.
|