スメクタイト質粘土鉱物の層間イオン組成と熱的性質の関係を明らかにするため、前年度に採集した試料を用いて化学分析、陽イオン交換容量の測定、X線回折、示差熱分析、光学的測定および分析電子顕微鏡により検討を行った。その結果次のような知見が得られた。 1.スメクタイトの交換性陽イオンの組成は、Naを主体とするもの、Caを主体とするものおよび水素型のものに大別される。元差熱分析によれば、その各々は100℃〜300℃の範囲で特徴的な脱水パターンを示すことが明らかになった。 2.陽イオン交換容量の値はスメクタイトの三層構造の層電荷に対応している。スメクタイトを加熱すると700℃付近で構造水を放出するが、層電荷の値の小さなスメクタイトは構造水の量が相対的に少なく、また脱水の温度が比較的高くなる(720℃)という結果が得られた。 3.スメクタイトを種々の交換性陽イオンで飽和させ、300℃に加熱後常温において復水させると、三層構造の間に一層または二層の水が入り層間隔は加熱以前の状態に復帰する。これをより高温まで加熱すると、常温に冷却しても復水しなくなる。復水不可となる限界の温度は層間イオンがMg型の場合に最も低く、また八面体シートの電荷の大きな試料程低くなる傾向が認められた。 4.今回新たに考察し設計した分散着色用レンズを装着した偏光顕微鏡を用いて加熱脱水試料を鏡下において温度変化法により屈折率の測定を行った結果、八面体イオンの同型置換に応じて屈折率の値が顕著に変化することが明らかになった。 5.分析分子顕微鏡により層電荷の値の異なるスメクタイト試料の組成を分析したところ、四面体シートと八面体シートの相方に同型置換のある試料には層電荷の値の異なる成分層が混在することが判明した。
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