Cu-Fe-S系には多数の鉱物種が含まれており、それら相互間の安定関係にはいまだ明らかでないものも多い。とくに、天然産鉱物に見られる低温での相平衡関係はきわめて複雑である。本研究は下記の3点に重電をおいて研究を行なってきた。 1.bornite-phrrhotite 共生関係 本研究代表者と西独Heidelberg大学のMoh教授と共同で開発した、硫化鉱物のplasma溶融実験の過程で、従来安定な鉱物組合せでないとされていた上記鉱物共生が、chalcopyriteないしcubanite組成をプラズマによる高温溶融で常に形成される事実を発見した。この鉱物共生が低温で安定となる場合、天然で一般に認められるmackinawite-chalcopyriteあるいはmackinawite-cubanite共生が成立しないことになる。本研究代表者のこれまでの天然産mackinawiteの化学組成の検討から純粋なCu-Fe-Sの3成分系でなく、Ni、Co等を微量でも含むことによって説明されることなどを含めて、Cu-Fe-S系の安定関係とともに既に印刷公表している。 2.異常なd(102)値をもつhexagonal pyrrhotite 上記プラズマ実験の過程で、stoichiometric FeSのd(102)値より大きな値をもつhexagonal phrrhotiteを見出した。EPMAによる化学分析結果もstoichiometric FeSよりもiron-richである事を示している。このphaseの存在は、特定条件下でのFe-S系の相平衡関係のみならず、phrrhotiteの結晶構造にも新知見を加えるものである。現在西独学会誌で印刷中である。 3.島根県斐川鉱山吉田鉱床産黄鉄鉱の研究 低温熱水性粘土鉱床に含まれる黄鉄自形結晶について、共生粘土鉱物、格子定数、含有微量元素および結晶表面に観察される成長模様などについて研究を行なった。
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