研究概要 |
1.実験方法の検討と超高真空極低温STMの試作 半導体中の拡張欠陥とくに転位の電子状態を次の段階を追って調べることにした. (1)荷電転位の不均一分布によって生じる結晶の抵抗率の場所的変化の観察. (2)一本の転位線のまわりに形成される空乏筒の直接観察. (3)荷電転位による表面仕事関数の面分布測定. (4)トンネル分光による欠陥準位の微視測定. 上記目的を達成するために最小限の機能をもつものとして, 次の機能を供えたSTM(走査トンネル顕微鏡)を設計試作した. 視野:5μ×5μ; チップ移動精度:XY方向1〓, Z方向0.1〓; 到達最低温度:20K; 真空度:10^<-10>Torr(室温); その場へき開可能 現在, 製作した超高真空極低温STMを組立て中である. 2.転位導入試料の作成 実験には, 表面準位が存在しないとされるGaAsの〔110〕へき開面を使用することとし, 低抵抗n型GaAs単結晶(n=10^<18>cm^<-3>)を転位が約10^8cm^<-2>含まれるまで550°Cで単一すべり方位で圧縮変形した. されをへき開面に60°転位線が現れるように切り出し, へき開条件を調べた. 3.荷電転位による抵抗率の異方性の原因解明 CdS単結晶を塑性変形すると現れる電気抵抗の異方性の原因を, 電気顕微鏡による転位組織観察によって調べた. その結果, 電気的異方性の原因は荷電転位によって高抵抗化したすべり帯が結晶中に不均一に形成されかつ異方的に積層するためであることが判明した.
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