1.超高真空極低温走査トンネル顕微鏡の組立て、調整、改良 前年度製作した走査トンネル顕微鏡(STM)の各部品の組立ておよび必要な電子回路の製作を行い、全装置の組上げ、調整を行った。また、装置に一部改良を加えた。特に、深針粗動機構に関し、当初の設計を変更し、耐震性能の向上と、粗動動作の自動化を行なった。 2.STM装置の性能評価 試作したSTM装置の性能を評価するため、金板およびSiO_2絶縁膜上に伝導性多結晶シリコンを集積したLSIテストパターンを試料として、定電流モードによる表面凹凸像、定高モードによる電流像が得られることを確認した。また面分解能は0.05ミクロン以下で、半導体中の転位周辺に形成される空乏円筒(直径数ミクロン〜サブミクロン)の観察には十分な分解能をもつことが分かった。 3.塑性変形したCdS単結晶の抵抗率不均一分布の直接観察 塑性変形したCdS単結晶に現われる顕著な電気伝導率の異方性の原因は、電子顕微鏡による変形組織観察から、結晶中に不均一に形成された厚さサブミクロンの層状すべり帯が高抵抗化しているとすると良く説明できることが分かった。これらを更に実証するため、上記STM装置を使い、変形したCdS単結晶の抵抗率の場所的変化を測定し、すべり帯の分布とほぼ一致することを明らかにした。 4.今後の計画 荷電による高抵抗空乏円筒を伴わないと期待されるP-GaAs結晶中のらせん転位について、走査トンネル分光を行なう。
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