研究概要 |
II-VI族化合物半導体の多くは, 基礎吸収端を可視光域及びその近傍に有しているので, 近年注目されている青色発光素子, 高効率太陽電池, 視感度に一致した光検出器. 高感度赤外受光器用の材料として優れた物性を持っていることが知られている. 最近, MOCVD法やMBE法等による良質の薄膜状単結晶を成長させる技術が進展し, フテロ接合技術, 低抵抗p,n両伝導性の半導体の開発, オーム性接触, ショットキー・バリアやMis構造等の素子化技術の改良により, II-VI族化合物半導体の電子素子への応用の道が開けつつある. 62年度には, (I)II-VI族化合物半導体住としてCdTeの表面状態の観察と制御を目的とし, 表面処理法として当初, スパッター・エッチングによるドライプロセスを計画したが予備実験で通常の簡単なイオン・スパッター装置では, スパッター・ダメージが大きく表面安定化に対し否定的な結果となった. ウェット・プロセスによる化学エッチングでは, ほぼ予定通りの進展をし, Br-メタノールによるエッチングで良好に制御させた表面状態が得られることを, オージェ電子分光法及びショットキー・バリア・ダイオードの電気特性(V-I,C-V特性)によって明らかにした. 又, Br-メタノールでエッチングして空気に瀑してない清浄面はSnなどの選択吸着性を有している. (II)II-VI族化合物半導体のMOCVD法による結晶成長に重点をおき, 結晶成長装置の自作を完成させ, MOCVD法によって成長させた薄膜状単結晶の表面モホロジーや結晶成長条件の考察を行った. 即ち(I)において得たBr-メタノールでエッチングしたCdTe(111)A面の表面状態は, エピタキシャル成長を行うにほぼ満足な状態であり, CdTeホモ・エピタキシャル層の成長を得た. ただし, 表面には(100)面を壁面とする三角錐の成長, アンチ・フェーズ・ドメインの発生等が観測され, 今後, より平滑で均質な薄膜状単結晶を得るために, (100)面又は(110)面への成長をも試みる. これらの結果は, 63年春季の応物学会(28pQ8/I)で発表する.
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