研究概要 |
(1)CdTe表面の安定化:スパッタ・エッチングによるドライブ・プロセスを計画したが、予備実験で通常のイオン・スパッタ装置によるとスパッタ・ダメージが大きく表面安定化に対し否定的結果が出た。ウエット・プロセスのBrメタノールによる化学エッチングでは、表面変質層は1nm以下とかなり良好な表面状態がえられた。さらにBrーメタノールエッチング後、H_2気流中で450℃の熱エッチングを行うことにより表面変質層の吸着酸素及び過剰なTeが除去され、化学量論組成の安定な表面がえられることをオージ電子分光法、ESCAにより確かめた。この安定化した表面にAuを用いてショットキー障壁を作り、DLTS測定により、0.46eVにVcdと考えられる一つの準位のみが存在し、界面準位に関連する準位は検出されなかった。 (2)MOCVD法によるCdTe薄膜結晶成長:結晶の大面積化、高品質化を目的として、減圧MOCVD装置の自作に取り組んだ。原料ガスとしてジメチルCdとジエチルTeを用いて、CdTe(100)、(111)A、(111)Bの各面へのホモエピとGaAs(100)面へのヘテロエピを行った。結晶成長条件としては、一定圧力(60Torr)の水素をキャリアガスとし、温度は350〜480℃、原料ガスの混合比(Te/Cd比)を1〜10まで変化させた。400℃以下の温度範囲ではTeの供給量によらずジメチルCdの熱分解量が成長を律速した。400℃以上では、温度とTeの供給量によって制御されているCdTe面上からのCd単体の再蒸発によって成長が律速され、CdとTeとの表面反応に依存するLangmuir-Hinshelwood型の成長機構であることを示した。基板の面方位依存性では、(100)面のエピ層が表面モホロジーも結晶性もよいことをSEM,PL,X線ロッキングカーブの測定より明らかにした。又、GaAs(100)上へのヘテロエピでCdTe(100)面が再現性よく成長させうる条件を見出した。このエピ層が2μmより厚くすればP型で電気特性もバルク結晶に匹敵することを示した。
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