偏光ラマン顕微鏡を用いて、単結晶シリコン薄膜の結晶方位を、短時間で一義的に決定する解析法を開発した。 従来は、ラマン散乱強度に対する検光子回転角依存性のデーターに理論曲線をフィッティングさせ、結晶方位を決定する方式を採用していた。しかしこの方法では収束性が悪く、解析に長時間かかっていた。新しい方法では、ラマン散乱強度が検光子の回転角に関する正弦及び余弦関数の和として表されることに着目し、まず測定データーから、線形最小二乗法でこの関数の係数を決定する。次にこの値に合う結晶方位パラメーターをフィッティングで、又は解析的に求める。測定データーのS/N比が良好なときには、結晶方位パラメーターを解析的に直接求める。S/N比があまり良くなくて、方位が他の実験手段からある程度予想がついている場合は、予想される値を初期条件にしてコンピューターでフィッティングをおこない、結晶方位パラメーターを決定する。S/N比が良くなくてしかも方位が予想出来ない場合には、パラメーター空間を分割して各点に対する係数を求める。その中から最適点を選び、この値を初期値としてフィッティングを行い、結晶方位パラメーターを決定する。 この解析法によって解析時間が大幅に短縮され、一点の解析時間が数分程度になった。 この解析法の応用として、ラテラルシーディング法でレーザー再結晶化したシリコン薄膜単結晶の結晶方位の空間分布を求めた。 さらに結晶表面に凹凸がある場箱、この凹凸が結晶方位決定に及ぼす影響について解析を行った。
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