ラマン顕微鏡を用いた従来の偏光測定では結晶方位の決定に対して長時間の解析を必要とし、かつ一義的に決まらないと言う欠点があった。本研究では結晶方位が短時間でかつ一義的に決定できるような解析の手法を開発した。種々の面方位をもつSi単結晶で解析を行った結果、単結晶では±2度の精度で結晶方位を決定することが出来た。 本研究の方法では、人射光の偏光方向を固定し、散乱光の光路に挿入した検光子を回転させてラマン散乱光強度の変化を調べる。さらに入射光の偏光方向を90度回転させた後同じ測定を繰り返し、これら二つのデーターを同時に満足する方位を求める。 我々はラマン散乱強度が検光子の回転角に関する正弦及び余弦関数の和として表され、その係数が結晶方位パラメーターの関数になっていることに着目した。方位の解析では、まず測定データーから線形最小二乗法でこの係数を決定する。次にこの値に合う結晶方位パラメーターをコンピューターで求める。この際にデーターのS/N比に応じてフィッティングの方法を変え、解析時間の短縮を図った。この結果一点の解析時間を数分に短縮することが可能になった。 ラテラルシーディング法でレーザー再結晶化させたシリコン薄膜(SOI構造)の局所方位決定に本手法を適用し、照射光の走査方向に沿って結晶方位がどのように変わるかを調べた。シードから離れるに従って、走査方向とほぼ垂直な方向に向く〈100〉軸を回転軸として、1ミクロン当たり0.1〜0.01度薄膜の結晶軸が回転することが確認された。 以上述べたように、本研究で開発した結晶方位解析システムはシリコン薄膜の微小部の方位決定に有効であることが確認され、実用化の見通しがついた。
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